悲しみの彼方に

皆さんこんにちは。

如何お過ごしでしょうか?寒さが一段と強くなってきたようですが、昼間は日差しがあると温かさを感じますね。

寒暖の差が激しい季節ですが、くれぐれも体調には注意してまいりましょう。

 

今回は龍谷大学鍋島教授のコラムの一部をご紹介したいと思います。

仏教とスピリチュアルケアについてのコラムを抜粋したものになります。

 

 「仏教は紀元前5世紀に、釈尊によって説かれた教えです。釈尊は「生老病死」の苦しみをありのままに知り、泥の中から咲く蓮の花のように、悲しみを転じて真実の生き方を開くことを明かしました。それは悲しみから逃避して生きることを教えたのではありません。泥なくして蓮が咲かないように、悲しみや煩悩があるからこそ、人は大切な愛情や心の絆に気づき、悲しみの中にこそ、その人にしかないかけがえのない花が咲いていくことを教えています。」

 

仏教の経典の中に「愛別離苦は、あらゆる苦しみの根源である。」と説かれているそうです。愛情が深い分、別れが苦しいということなのですね。

今まで当たり前のようにあった何かを失うとき、人は悲しみと喪失感に襲われます。失うことなど考えもしなかった日常で起こるこの喪失は、大切な人であればあるほど大きくなるものなのですね。今までのあたりまえの時間がずれてしまったような、それでいて時間が止まってしまったような、とても空虚でむなしい感情なのだと思うのです。

 このコラムでは、人は大切な人を失ったときに、残された家族の絆を強めていくことで、心の空白を少しずつ埋めていくことができると書かれています。亡くなった人は帰ってきませんが、新たな絆として家族の中に生き続けることになるのです。折に触れ亡き人の思い出話をする度に、家族を守ってくれる存在と変わっていくのかもしれませんね。仏教はそんな故人との関わり方を教えてくれているのでしょう。私は敬虔な仏教徒ではありませんが、宗教が人の心のよりどころとなっていることに間違いはないと思います。最後にこのコラムにはこう書かれています。

「死ぬこと自体は決して不幸ではなく、人間の思いの及ばぬ死の彼方は、仏の光に満ちています。あなたが苦しい時、またあなたが嬉しい時、亡き人は仏となってあなたを慰め、微笑んで、あなたが誰であるか、どこへ行くべきなのかを示してくれることでしょう。」

                          つくば国際大学  塙恵子