鬼子母神

皆さま こんにちは。

もうすぐ1年が過ぎますね。早いものです。

寒さが一層増してきたこの頃ですが、お変わりはないでしょうか。

このところ、小さな子どもに関する恐ろしい事件が続いておりますね。

私としてはとても心が痛いニュースで、毎日テレビをつけることをためらってしまします。

静岡県の保育士さん3人の逮捕は、記憶に新しい事件です。書類送検ではなく逮捕という言葉に事件の重さを感じています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?私はこの事件を聞いて、鬼子母神の話しを思い浮かべました。今日はそのお話しを書いていきたいと思います。

話しが暗くなりがちなので、イラストにムーミンママを載せてみました。

鬼子母神は子どもを守る神様ですが、神になる以前には子どもを食らう鬼でした。なぜ子どもを食らう鬼だったのか、それは、

鬼子母神の子ども達に、人間の子どもを食べさせるためだったと言われています。自分の子どもの命を守るために、人間の子どもの命を奪っていた鬼子母神。鬼子母神の目には我が子しか映らなかったのですね。我が子を守るために鬼になった。そんなある日、 観音様が見かねて鬼子母神の子ども達を隠してしまします。子どもたちを亡くした鬼子母神は嘆き悲しみ、この時初めて子どもを亡くした親の気持ちを理解します。誰の子どもであれ、命に違いがないことを悟るのですね。そうして鬼子母神は罪を悔い改め、  子どもを守る神へと変わったというのです。

逮捕された保育士さんたちも自分の家庭にはお子さんたちがいたと報道されています。母として我が子へ注ぐ愛情と、他人の子どもへ注ぐ愛情が、きっと鬼子母神の様に同じではなかったのかもしれません。

私は長く臨床(病院)にいて、様々な子どもたちを見てきました。ある子どもは分娩時に重い障害を残し、ある子どもは事故で重い障害を残し、呼吸器で命を繋いでいるそんな子どもたち。何も見えず、何も聞こえない、何も考えることができない、手も足も動かさない、脳波がフラット(平坦)である、痛みを感じない、他にも様々な検査で医師たちが判断した、いわゆる「脳死」の子どもたち。そんな子どもたちも見てきました。

日本では、国会で子どもの臓器移植法案が通ってから、「脳死」と判定された子どもたちのご両親へ、医師から臓器移植の話しをします。そんな時、私はこの鬼子母神の話を想い浮かべるのです。我々医療者は鬼子母神だなと。

医療とは、子どもの命を奪う鬼と子どもの命を守る神、その双方を持ち合わせたまさに鬼子母神なのかもしれません。

私はいつの日か、日本の医療が子どもの命だけを守る神となることを願ってやみません。

                                 つくば国際大学 塙恵子