震災の記憶

2024年を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか。

元旦から石川県地震が起きて、今年はどんな年になるのやら一抹の不安がよぎりますね。

昨日の地震報道を聞いて、13年前の東日本大震災を思い出した方も多くおられるのではないでしょうか。

当時私は手術室に勤務しており、最後の手術が終わった直後でした。初めは軽い揺れを感じて直ぐに収まるだろうと

思っていましたが、その揺れがどんどん強くなって立っていられない程の揺れを感じました。2階フロアにいた私達は、このまま床が崩落して落ちていくのだと覚悟したのを覚えています。

その時初めて「死」を身近に感じました。「ああ、このまま死ぬのだな」とおぼろげに思ったものです。

被災された方は「死」についてそう捉えた方も、少なくないのではないでしょうか。

揺れが収まって、外を見た時の衝撃を今でも忘れません。民家の壁が崩れ落ちて電線が切れて落ちており、信号は消えていて道路のあちこちに亀裂が走っていました。まるで戦争の後のような、そんな光景でした。病院から一時帰宅をお願いし、信号の消えた道路をゆっくりと進みながら、我が家を目指していた時「どうか無事でいてほしい。神様お願いします。」と何度も何度も繰り返し呪文のように唱えていました。その一方で我が家は既につぶれていて家族が下敷きになっているそんな絶望的な光景を心に思いうかべて覚悟していたことも事実です。我が家と家族の無事を確認したとき「ああ、神様!」とどれだけ感謝したか分かりません。私はその足で直ぐに病院へ駆けつけ、その夜は怯える子ども達と病院で過ごしました。

病院から見える町は人影がなく、外は漆黒の闇に包まれていて、明かりは全く見えませんでした。

寒い夜は、小さなこどもを抱きかかえながら暖かいぬくもりと子ども達の笑顔に癒されながら、生きていることの喜びを神様に感謝したことを今も思い出します。

人は、今苦しく辛いことを経験していても、きっといつか思い出に変わる時がきます。今は苦しくてとても歩き出せそうになくても、いつかきっと歩き出せる時が来るのです。

人とのぬくもりを感じながら、人に助けられながら、人はそうして立ち上がるのだと思うのです。

                          つくば国際大学 塙恵子