心の風邪

皆様、こんにちは。4月になり新年度が始まりましたがいかがお過ごしでしょうか。

大学は、2月の看護師国家試験、3月の卒業式から4月の入学式と行事が目白押しでしたが、

ようやく一息ついたこの頃です。

今年の桜は少し遅れましたが、大学の桜ももう満開を迎えます。皆様はもう桜は見たでしょうか。 今年も1年がまた始まるなあ、と毎年のことですが感慨深い気持ちになります。

桜を見上げるほど心に余裕が無い、と言われる方もおられるのではないかと思います。斯く言う私も 以前は桜を見上げるほど心に余裕がない生活を送っていました。もう10年以上前になりますか。 私は仕事での人間関係に疲れ果て、更年期も相まってか「心の風邪」をひいてしましました。何もかも嫌になり、自信が無くなって、自分がとても惨めな存在に思うようになったのです。世の中の人全てが私を蔑んでいるように見える、そんな毎日でした。人はちょっとしたタイミングで、心に風邪をひいてしまします。誰もがかかり得る風邪なのですが、自分では治らない不治の病の様に感じるのです。暗いトンネルの中をさ迷っているようで、出口が見つからない暗闇の中にいる感覚でした。     雨の日や曇りの日は余計に自分が惨めに思うのです。

どうして私だけがこんな思いに襲われるのか。とりとめのない考えが常に頭に浮かぶのです。

 何を見ても何も感じない日々、何も食べたくない、食べようと思わない日々、テレビを見ても面白くもおかしくもない、大好きだった愛犬もうるさい存在に感じる、誰の言葉も耳に入らない、ベールが1枚私の体を覆っているように世間から分離されているようなそんな日々でした。ただこの時私を救ってくれたのが、学びたいという学問への強い想いと後輩達の気遣い、そして無垢な子ども達の笑顔でした。何も感じない日々の中で、ある心疾患の赤ちゃんが苦しい息の中で私に笑いかけてくれた時「どうしてこの子は、 こんなに苦しそうなのに、こんな私のために笑ってくれるのだろう。」と思ったのを今でも覚えています。そしていつの間にか自分も笑顔になっているのです。何も感じないはずが、そこに笑っている自分がいる。そんな私を自分自身が驚いていたのを昨日のことの様に思い出します。人間関係に疲れ果てた私を救ってくれたのは、結局人間関係だったのですね。

以前にも書きましたが、ケアとは決して誰かをケアすることだけではないのです。相手をケアしていると思っていても、最終的には 自分がケアされていると言うことなのです。

人は人によって苦しみますが、人を癒すのもまた、人なのだと思うのです。

今は暗闇の中でも、いつか小さな光が見える時がきっと来ます。

その時、出口が見えなかった暗いトンネルを抜けだすことができるのだと思うのです。

                                    つくば国際大学 塙恵子